妊娠初期は、赤ちゃんの色々な組織や器官が作られる特に大切な時期です。なかでも「神経管」は、脳や脊髄のもとになる重要な部分。もしこの神経管が正しく閉じなければ「神経管閉鎖不全症」という先天性疾患が起こります。
病気を正しく知ることが、赤ちゃんを守るための最初の、そして最も重要な一歩になります。
この記事では、神経管閉鎖不全症とは何か、そしてどのように予防できるのかをわかりやすく解説します。
「神経管閉鎖不全症」とは?まずは知っておきたい基礎知識
脳と脊髄の基礎となる「神経管」の役割
「神経管」とは、妊娠初期に赤ちゃんの体の中にできる、細長い管状の器官です。この神経管が、将来の脳と脊髄、そしてそれらを覆う背骨の土台になります。
胎児の発達において非常に重要で、この構造が正しく形成されなければ、脳や神経の正常な働きに大きな影響が出ます。
神経管閉鎖不全症は、神経管が閉じない障害

神経管閉鎖不全症は、妊娠初期に神経管がきちんと閉じないことで起こる障害で、神経管閉鎖不全症の代表的なものは以下の2つです。
- 無脳症(むのうしょう):神経管が頭の部分で閉鎖せず、脳の一部や頭蓋骨が形成されない状態。流産や死産に至ることがほとんどです。
- 二分脊椎(にぶんせきつい):神経管が背中の部分で閉鎖せず、脊髄が体外に露出する状態。症状の重症度は発症した部位や程度によって異なり、軽い場合はほとんど症状がないこともありますが、重い場合は生涯にわたる下半身の麻痺や歩行障害、排せつ機能の障害が残ることがあります。
神経管閉鎖不全症と診断された場合、継続的な医療的ケアが必要になります。赤ちゃんは何度も手術を受けたり、リハビリテーションを行ったりすることになるかもしれません。また、家族は精神的、経済的な負担を抱えることになります。
妊娠3~4週目がポイント!発症のタイミング
受精後、胎児の背中側に「神経板」という平らな組織ができます。
神経板が中央からくぼみ始め、溝のような形(神経溝)になります。
両端から徐々に閉じていき、筒状の「神経管」が完成します。
これが脳や脊髄に成長していきます。
神経管は、妊娠のごく初期、妊娠3週目から4週目にかけて形成されます。これは、まだ妊娠に気づいていない人も多い時期です。そのため、妊娠を計画している段階から予防に取り組むことが非常に重要になります。
神経管閉鎖不全症はいつ・どうやってわかる?診断時期と判別ポイント
出生前診断でわかること(超音波検査・クアトロ検査)
神経管閉鎖不全症の一部は、妊娠初期から中期にかけて行われる超音波検査で発見できることがあります。しかし、症状や発症部位によっては見つけにくい場合もあります。
クアトロ検査は、血液検査によって赤ちゃんのダウン症や18トリソミー、そして神経管閉鎖不全症のリスクを調べるスクリーニング検査です。この検査は、確定診断ではなく、あくまでリスクの確率を算出するものです。そのため、クアトロ検査で「高リスク」という結果が出た場合でも、必ずしも病気であるとは限りません。
もし発見されたら…心の準備とサポート体制
もし妊婦健診で神経管閉鎖不全症の疑いが見つかった場合、まずは冷静に医師の説明を聞きましょう。必要に応じて、遺伝カウンセリングを受けることも可能です。
神経管閉鎖不全症が起こりやすい人は?原因とリスク要因・予防法
神経管閉鎖不全症は複数の要因が重なって発症すると考えられています。
代表的なものは以下です。
- 葉酸不足:神経管形成に不可欠な栄養素。
- 遺伝的要因:家族に同様の疾患がある場合はリスク上昇。
- 母体の健康状態:糖尿病や肥満もリスク要因とされます。
- 生活習慣:喫煙、過度な飲酒、栄養の偏りなど。
葉酸不足
厚生労働省は、妊娠を希望する女性や妊娠初期の女性に、食事とは別に1日400μgの葉酸をサプリから摂取することを推奨しています。妊娠に気づいた時点では予防のタイミングを逃す可能性があるため、妊活中から始めるのが理想です。
遺伝的要因
神経管閉鎖不全症の出産歴がある場合に再発率が上がります。葉酸を体内でうまく利用できない体質や、葉酸の代謝に関わる遺伝子に変化がある場合、リスクが高まると考えられています。
なっち家族歴のない神経管閉鎖不全症のリスクが0.3%に対し、神経管閉鎖不全症の出産歴がある場合、4%に再発率が上昇したという英国の研究報告があります。
ただし、遺伝だけで発症するわけではなく、葉酸不足などの他の要因と組み合わさることでリスクがより高まるとされています。
妊娠前・妊娠中の生活習慣
ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、アボカドなど葉酸を含む食品を意識的にとることが大切です。ただし加熱で壊れやすく、食事だけでは必要量に足りないため、サプリとの併用が現実的です。
禁煙・禁酒
タバコやアルコールは胎児の発育を阻害し、葉酸の働きを弱めることが知られています。
糖尿病や肥満との関連性
無理のない運動習慣は母体の健康維持に役立ち、妊娠中の合併症リスクも下げます。
なぜ葉酸が重要?科学的根拠と効果的な摂り方
葉酸が神経管の形成を助ける仕組み
葉酸は、細胞の増殖やDNAの合成に不可欠な栄養素です。妊娠初期の赤ちゃんの急速な細胞分裂をサポートすることで、神経管が正しく形成されるのを助けると考えられています。
厚生労働省が推奨する葉酸の量と摂取期間


厚生労働省は、妊娠を計画している女性〜妊娠11週末までを特に葉酸の大事な時期としています。
食事だけでは必要量の640ugに達しないので、葉酸サプリ400ugをとることを推奨しています。
妊娠中期以降は、神経管閉鎖不全症の予防にはなりませんが、葉酸が分解されやすいことを考えて100ugの葉酸サプリが推奨されています。(産科婦人科ガイドライン2023参考)
なぜ「妊娠前」から始める必要があるのか?
先述した通り、神経管の形成は妊娠がわかる前の時期から始まります。妊娠に気づいてから葉酸を摂り始めても遅い場合があるため、妊娠を希望する1ヶ月以上前からサプリメントでの摂取を始めることが大切です。
「遅かったかも…」と心配になる方もいるかもしれません。



大切なのは、気づいた今から葉酸をしっかり摂ることです。
葉酸は赤ちゃんの健やかな成長をサポートする大切な栄養素です。まずは焦らず、今日から葉酸サプリを始めることで、赤ちゃんに最高のスタートを切らせてあげましょう。
まとめ:赤ちゃんへの最高の贈り物
「神経管閉鎖不全症」は、知識と予防策によってリスクを減らせる病気です。
- 妊娠前から(妊娠に気づいたらすぐ)葉酸サプリを飲むことの重要性
- 正しい知識をママとパパ、家族みんなで共有すること
これらは、赤ちゃんへの最高の贈り物です。あなたの行動が、赤ちゃんの健やかな未来を守る力になります。






コメント