妊娠中、お風呂にゆっくりつかる時間は貴重なリラックスタイムのひとつ。でも「お湯の温度は高すぎない?」「長風呂して赤ちゃんに影響ないかな?」と、入浴中のトラブルやリスクが気になっていませんか?
妊婦さんが安心してお風呂時間を楽しむためには、正しい情報と自分の体調にあった判断が大切です。
この記事では、妊婦さん300人へのアンケート結果をもとに、妊娠中の安全な入浴温度や時間、実際に起こりやすいトラブル事例、そして先輩ママたちが実践してきた入浴の工夫を徹底解説します。
リラックスと安心を両立するために、ぜひ参考にしてください。

訪問看護師として働きながら、医療ライターとしても活動しています。現在第二子を妊娠中で、2回の妊娠ともに「食べづわり」でつらい思いをしました。妊娠中の入浴では、お腹が大きくなるにつれて足先が洗えなかったり、自分で体を拭くのが難しくなったりと、思わぬ苦労を経験しました。
看護大学では卒業研究として量的研究に取り組み、アンケート分析にも慣れています。
看護師としての専門知識と、自らの妊娠・出産経験を活かしながら、「読んで安心できる」医療情報をお届けできるよう心がけています。
妊娠中の入浴に気をつけるべき理由とは?
入浴中には、立ちくらみやめまい、高温による体調不良など、妊娠中ならではのトラブルが起こることがあります。
また、妊婦さん自身だけでなく、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があるため、正しい知識を持って入浴することが大切です。
妊娠中のリスクが起こる原因を知ることで、入浴タイムもより安心して快適に過ごすことができます。
ここでは、妊婦さんと赤ちゃん、それぞれに関わるリスクについて、医学的な視点からわかりやすく解説していきます。
妊婦さんのリスク
人は立ち上がるとき、血液が下半身に移動するため、一時的に血圧が下がります。これによって、立ちくらみやめまいなどの症状が起こることがあります。
通常は、心拍数を増やしたり血管を収縮させたりすることで血圧を調整していますが、妊娠中はこの調整機能が弱まりやすくなっています。そのため、浴槽から立ち上がる・座るなどの動作には注意が必要です。
また、お腹が大きくなってくると足元が見えにくくなり、ふらつきや転倒のリスクも高まります。入浴でしっかり体が温まった後に薄着のままで過ごすと湯冷めしやすく、体が冷えてお腹の張りにつながることもあるため、入浴後の保温にも注意が必要です。
赤ちゃんのリスク
妊娠初期に、妊婦の体温が39度以上になると胎児奇形のリスクがあるという報告があります。
一般的に妊婦に無理のない範囲での入浴で、赤ちゃんへの影響は少ないため、心地よい範囲での入浴をおすすめします。
しかし、高温の入浴による母体の体調の変化で転倒などが見られると、流産や早産などのトラブルを引き起こす場合もあります。
妊婦300人に質問!妊娠中の入浴トラブルはあった?
今回のアンケートで、先輩ママのうち、3人に2人が入浴トラブルを経験していることがわかりました。
どのようなトラブルを経験しているか紹介します。
1位|めまい・立ちくらみ
アンケートに答えた5人に1人(114人)が、めまいや立ちくらみを経験していました。
シャワーだけの日が多かったですが、いつも通りの入浴方法だったのに立ちくらみの回数が多かったです。(32歳・自然妊娠)
すぐにのぼせてしまって、お風呂から出る時に立ちくらみしてしまった。(30歳・自然妊娠)
いつもより長めに湯船に浸かると目眩がしました。妊娠中期あたりから入浴中にお腹の張りを感じるようにもなりました。(32歳・自然妊娠)
貧血で立ちくらみやめまいで数回倒れたことがありました。(27歳・自然妊娠)
2位|のぼせ・ほてり
のぼせやほてりを感じた人は全体の85人(14.3%)で、めまいや立ちくらみに次に多いです。
脚の浮腫が強かったため、入浴中によく揉んでいた。そのため、短時間しか入浴していないのにのぼせることがあった。(35歳・顕微授精(ICSI))
妊娠後期になるとすぐにのぼせてしまって、ちょっとしか入っていられませんでした。(30歳・自然妊娠)
妊娠後期になってから入浴後のぼせや立ちくらみが起きるようになり、上の子と一緒に入っておりゆっくり休めなかったので入浴前後に水を一杯ずつ飲むようにしたら改善された。(28歳・自然妊娠)
3位|動悸
妊娠中は妊娠前と比べて、体に送る血液量が妊娠後期では約1.5倍の量に増えます。
多くの血液を体に送るために、妊娠後期では通常よりも心拍数を一分当たり10~20回増やすのです。
そのため、妊娠中は普段よりも動悸が起こりやすい状況にあります。
入浴時は体が温まり、血管が拡張して、より強く動悸を感じる場合があります。
動悸を感じたら、すぐにお湯につかるのをやめて、休憩するようにしましょう。
28週くらいから動悸や息切れが出てきた。(21歳・タイミング法)
妊娠5〜6ヶ月頃寒い日だったので身体を冷やしちゃいけないと思いいつもより長い時間入って、湯船から出た時に立ちくらみと動悸、身体がズドーンと重く怠さがあったのですぐ倒れない様に手すりをつかみ落ち着くまで座って過ごして、少し落ち着いたら冷水で顔を軽く洗いました。(36歳・自然妊娠)
妊娠中期ごろに、入浴中にめまい・動悸・冷汗・吐き気を催したことがある。おどろいて、急いで体を拭いてベッドで臥床して下肢挙上して様子を見た。(29歳・自然妊娠)
3位|息苦しさ
だんだんと子宮が大きくなってくると、横隔膜が持ち上げられます。
横隔膜が上がると、肺が圧迫されて呼吸が浅くなり、息苦しさを感じるのです。
妊娠中期ごろに、入浴中にめまい・動悸・冷汗・吐き気を催したことがある。おどろいて、急いで体を拭いてベッドで臥床して下肢挙上して様子を見た。(29歳・自然妊娠)
体が重くなり、湯船に入ったり出たりするのが大変になった。息苦しくなった(30歳・自然妊娠)
後期は、少し動いただけで息切れしていたので、短い入浴時間でもめまい、立ちくらみが多かったです(24歳・自然妊娠)
28週くらいから動悸や息切れが出てきた。(21歳・タイミング法)
3位|お腹の張り
お風呂では、立ち座りの動作によりお腹に力が入ったり、乳頭への刺激で子宮収縮が促されたりして、お腹が張る場合があります。
お腹の張りを感じたら、楽な姿勢を取るようにしましょう。
乳頭マッサージを行っているならば、お腹の張りを感じたらマッサージを継続するか主治医に相談してください。中止する必要があります。
おなかが張ることがよくあり、一度湯船に入るとおなかが張って苦しく感じることがあり長時間入浴はできませんでした。(24歳・タイミング法)
お風呂上がりにお腹の張りを感じることが多かった。体を拭くなどの動作が負担だった。(38歳・人工授精(AIH))
妊娠中期になるとお腹が張ることがよくあった(37歳・自然妊娠)
その他
入浴中、つわりや不快感を感じた先輩ママもいました。
妊娠初期はなぜか入浴中につわりの症状が出てしまい、何回か吐いてしまうことがあった。(30歳・自然妊娠)
不調という程ではないが、なぜかお湯を顔にかかる感覚が不快で、妊娠中は顔を洗うのに苦痛を感じていた。(30歳・自然妊娠)
妊娠後期からお風呂によく浸かるようになったが、お風呂上がりに生理痛のような痛みが良く出た。入浴時間を短くしたり、シャワー時に椅子に座るようにしたら痛みはマシになった。(30歳・自然妊娠)
妊娠中の入浴温度は38~41度が推奨
妊娠中でも入浴はリラックス効果や血行促進といったメリットがあり、体調に問題がなければ取り入れてOKです。
ただし、お湯の温度が高すぎると体への負担が大きくなり、のぼせや立ちくらみの原因になることも。
38〜41度のぬるめのお湯を目安に、無理のない範囲での入浴を心がけましょう。
300人に質問|妊娠中の入浴温度の変化は?
寒くなる冬場でも171人(81.8%)の人が推奨温度に設定しており、全体の71人(23%)の人が妊娠してからお湯の温度をぬるく調整していました。
42度以上だと入浴トラブルの頻度は上がる?300人のアンケート結果から考察
今回のアンケートで統計的な解析を行いましたが、お風呂のお湯の温度の違いによる入浴トラブルの頻度の変化は確認できませんでした。
妊娠中の入浴時間は10分以内が推奨
長湯は、のぼせや立ちくらみの原因になってしまいます。
10分以内を目安にして、のぼせる前に上がるようにしましょう。
300人に質問|妊娠中の入浴時間や頻度の変化は?
159人(53%)の人が、入浴時間を短くするように工夫しています。
妊娠7か月以降の入浴時間は10分以内の人が152人(50.6%)でした。
体調により湯舟ではなくシャワーで済ませた人も11.4%でした。
11分以上だと入浴トラブルの頻度は上がる?300人のアンケート結果から考察
統計解析をしましたが、今回のアンケートでは、長湯による入浴トラブルの頻度の変化は確認できませんでした。
しかし、長時間・高温での入浴は、のぼせや立ちくらみのリスクが高まります。
心地よいと感じる範囲での入浴をお勧めします。
先輩ママから学ぶ!妊娠中の入浴で工夫したこと
ベスト1位|めまい・立ちくらみ防止!ゆっくり立ち上がる
一番多かったのが、153人(20%)の人の「ゆっくり立ち上がる」ことでした。
めまいや立ちくらみが起こりやすい入浴では、特に注意を払っている人が多いことがわかりますね。
かがんでいる姿勢から急いで立つと、めまいや立ちくらみが引き起こされてしまいます。
立ち上がる時に、頭の位置が急に変わらないように、できるだけ頭を低くするように意識してみてください。
ベスト2位|入浴前後の水分摂取
立ち上がる時の注意に次いで多かったのは、129人(18%)の人の「入浴前後にしっかりと水分を摂った」ことでした。
入浴で体が温まると、汗で水分が失われて脱水を引き起こしやすくなります。
脱水状態では、血液量が低下するため、血圧が下がる可能性があります。
めまいやのぼせに繋がるため、水分の十分な摂取は非常に重要です。
冷たい飲み物を急にたくさん飲むと、体への負担が大きいので、少しずつ飲むようにすると良いでしょう。
ベスト3位|入浴時間は10分以内
妊婦の推奨されている入浴時間は、10分以内です。
94人(31%)の先輩ママが、入浴時間を工夫していました。
妊娠中は、ホルモンバランスが変化し、血管を広げる作用があるプロゲステロンが増加します。
血管を広げる作用により、低血圧になりやすいため、妊娠前よりも短めに入浴時間を設定するようにしましょう。
ベスト4位|入浴温度は38〜41度
88人(29%)の先輩ママが工夫したのが、入浴温度です。
のぼせやほてりは、お風呂での体温上昇が主な原因です。妊娠によって起こる腰痛や恥骨痛は、温めることで軽減できる可能性があります。温めようとして、お風呂の温度が高くなりすぎないように気を付けてください。
ベスト5位|体調をみながらシャワーも活用
体調に併せてシャワーを活用した人は、全体の88人(23%)でした。
入浴トラブルを経験した先輩ママは、今回のアンケートは全体の3人に2人と多くの人が経験しています。
無理せずシャワーで体の清潔を保つことも、大切な体のために必要な場合もあります。
妊娠中の入浴が不安な人へ|先輩ママからのメッセージ
妊娠中の入浴が不安な妊婦さんへ、先輩ママさんが心強いメッセージをくれました。
辛い時は入らなくてもいいし、ゆっくりしたい時は体調に気をつけてゆっくりすればいいと思います(28歳・自然妊娠)
あまり気負いせず、担当の先生にしっかり相談して、自分の体調は自分が1番よく分かっていると思うので、入れそうであればリラックスにもなるので全然いいと思います!(28歳・自然妊娠)
自分の体調と相談して、大丈夫そうなら、リラックスできるし避ける必要はないと思います。
母親世代とかは当時の知識でいろいろ言ってくるかと思いますが、相談すべきは自分の体調とお医者さんなので、何言われても気にせずいきましょう。(32歳・タイミング法)
大変な妊娠生活の中、唯一1人になって落ち着くことができる時間が入浴だと思います。産後はなかなかゆっくりできないので、今のうちに無理なく入浴を楽しんでください♪(28歳・自然妊娠)
本やネットに色々情報が流れており、何が正しいか判断が難しいと思います。迷ったら、お医者さんに相談してみるのが一番だと思います。(30歳・自然妊娠)
先輩ママたちは、妊娠中は自分の体調と医師の指示に従って入浴を楽しむようアドバイスしています。
まとめ|妊娠中も安心してお風呂を楽しむため3つのポイントに
妊娠してから、自分の生活の行動が赤ちゃんに影響がないか不安を感じている人も多いと思います。
体調がすぐれない中でも、安心した気持ちで入浴できることが大切です。
- 高い温度のお湯は避ける
- 長湯は避ける
- 体調に不安がある場合は、シャワーを選んだり、休みをとったりして体の負担を減らす
今回のアンケートから、入浴時の体調不良を経験した先輩ママが多いことがわかりました。
お湯の温度を適切に保ち、長風呂を避けるなどの工夫をすることで、めまいや立ちくらみなどのトラブルを予防できる可能性があります。
また、妊娠中は悪阻やお腹の張りなど、入浴以外でも体調の変化に悩まされることが少なくありません。
入浴の際は、医師のアドバイスやその日の体調に合わせて、時間や方法を調整することが大切です。
入浴には、身体を清潔に保つだけでなく、心と体をリラックスさせる効果もあります。
無理のない範囲で取り入れながら、心地よいバスタイムで妊娠生活を前向きに過ごしましょう。
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